『どうする家康』第9話(守るべきもの)の感想

『どうする家康』第9回(守るべきもの)を視聴したので感想を書きたいと思います。今回も良かった点、良くなかった点、学びがあった点の3つについて書いていきます。

 

良かった点は2つあります。1つ目は、一向一揆を軸にして本多正信対家康という構図を描いていたことです。本多正信は民衆側、家康は支配者側という位置付けですが、正信がなぜ民衆側についたのか、幼少の頃の回想シーンも含めて丁寧に描いている点に好感が持てました。『どうする家康』にしては珍しくシリアスかつ重苦しいシーンが続きましたけど、和睦後に家康が本多正信と対面する場面は、お互いの信念をぶつけ合う胸熱な展開だったと思います。本多正信役の松山ケンイチさんは仕草や声のトーンも含めて演技力が凄くて、主役の松潤さんを圧倒している部分もあったと感じました。

2つ目は、ラストシーンで武田信玄が千夜と対面する場面です。一向宗の巫女である千代は、実は信玄の諜報部隊として三河に送り込まれていたようですね。千代の家康に対する評価が面白くて、武将としての才能は信長に遠く及ばず、肝も小さいと言っていました。ただし、自分が弱いことを自分が一番良く知っている面白い男とも付け加えていました。客観的に自分を見ることが出来る。家康の長所の一つが明らかになりました。武田信玄も家康が思ったより早く一揆を鎮めたことを評価していましたし、ここから家康の快進撃が始まるのでしょうか。

 

一方で良くなかった点は1つあります。それは三河一向一揆の形勢が逆転する場面です。家康が自信を喪失し、城に引きこもって劣勢になりますが、最古参の忠臣の助言により迷いを吹っ切り、そこから形勢を逆転し一向宗側との和睦に結びつけます。家康の精神面での成長は描かれているのですが、もっと具体的に形勢を逆転させる要素を挙げて欲しいと感じました。例えば、忍びを使って情報戦を展開した、三河の混乱に乗じて謀反を起こした者を忍びを使って暗殺した、などなど、どのようにして三河一向一揆を鎮めたのか気になります。

 

最後に学びがあった点ですが、家康と一向宗との和睦について考えてみたいと思います。表向きは一向宗の被害を元通りにする、と書面で約束しますが、実際は二度と一揆が起こせないように寺を解体しようとします。立場の弱い側が権力者側と和睦をする場合、常にこういうリスクを考えておく必要があるということでしょうか。現代で言うとロシアとウクライナの関係を彷彿とさせますね。ウクライナ側も和平交渉をする場合、慎重にやらないと一向宗と同じ目に合う可能性が高いと感じます。まさに「歴史は繰り返す」ですね。