『どうする家康』第25話(はるかに遠い夢)の感想

 

 

『どうする家康』第25話(はるかに遠い夢)を視聴したので感想を書きたいと思います。今回も良かった点、良くなかった点、学びがあった点について書いていきます。

 

まず良かった点は1つあります。それは、築山事件が通説とは違い、大胆な解釈で描かれている点です。通説では、信康の正室である五徳が信長に訴状を送り、それがきっかけで武田との内通を疑われ、信長は築山殿と信康の処分を家康に命じます。築山殿は処刑、その後に信康は切腹を命じられるというのが従来の通説です。

ところが、今回の物語では、五徳の訴状が事件のきっかけではなく、武田勝頼の情報漏洩が事件のきっかけとなり、家康は最後まで築山殿と信康を助けようとします。通説では、築山殿は性格が悪い悪女になっていますが、今回の物語では、芯のある凛とした女性として描かれていました。『どうする家康』は全体で50話程度だと思います。第25話は丁度折り返し地点。前半の総括として築山殿に焦点を当て、戦のない世をつくるという想いを家康に託す流れは悪くないと感じました。ただ、秘密の企みがバレて追い詰められ、自害を決意する様子は見ていて辛いものがありました。

 

良くなかった点も1つあります。良かった点と表裏一体になりますが、築山事件を物語前半のハイライトに据えた点です。特に正室である築山殿(瀬名)に焦点を当てて主人公級の扱いをしたことに対して賛否両論がある気がします。『どうする家康』のテーマとして新しいリーダー像の提示という大義名分があるのですから、物語前半の締めは家康中心の物語で締めてほしかったですし、せめて家康と家臣団との絆など、描く要素は他にも多くあったはずです。

 

最後に学びがあった点ですが、責任の取り方について考えてみたいと思います。日本人なのでそれほど違和感がない、失敗してからの切腹という展開。外国人には理解されにくい切腹ですが、改めて考えてみるとすごい風習ですよね。人間は腹を切っても絶命しませんから、介錯が必要になります。武士の美学とは言え、壮絶な死に方であることには違いありません。組織に問題が起こった場合、組織のトップが責任を取るのではなく部下に切腹を命じて、それで問題が解決した雰囲気になる。今回の物語でも信康が「切腹して徳川家を守る」と言っていましたが、組織に問題が起きた場合、トップが責任を取るのが道理でしょう。そういう意味で徳川家康の決断には幻滅しました。